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アニマル・サージュ

(ワセダ・レビュー電子版第1号への寄稿を転載しました)


最近話題の「民泊サイト」を通して、訪日外国人観光客に書道の体験教室を行っている。民泊サイトは宿にとどまらず「体験」や「レストラン」も予約できるようになり、観光客は「宿予約」同様に、企業ではなく個人が提供する体験を予約し、参加できる仕組みだ。


 あらかじめ体験教室を行う日程を設定しておけば、申込みが入ると通知が来る。申し込んだ人を、プロフィールや以前に宿泊した家のホストによるコメントを見て確認する。歓迎のメッセージを送り、直前には待ち合わせ確認もする。連絡はサイトやアプリ経由で、支払も民泊サイトのカード決済なので、連絡先を開示したり、金銭のやりとりで煩わされたりすることもない。意外とスムーズ、実感したことの一つである。


 書道体験では、自分の名前や好きな言葉を漢字で書いてもらっている。その前に、漢字にはそれぞれ意味があり、その由来はものの形だったり、意味があるパーツの組合せであったり……というようなことを説明する。次に筆の扱いを簡単な文字で練習し、最後に名前または好きな言葉を色紙に書いてもらう。名前の場合は、各自の名前の音に合わせて漢字の候補を出し、それぞれの意味を説明して本人に気に入ったものを選んでもらう。


 先日、フランス人アーティストの女性が参加した。名前はクレールと言い、漢字を「紅留」と候補に考えていたのだが、彼女は自分が考えていることを書きたいという。何を書くのかと尋ねたところ、「人間は、賢くて調和を求め

る動物、アニマル・サージュだ。けれど、あくまで『動物』だと思う。自分はそんな動物としていつも動いていたい」という。そういうことばは日本語にないのかと聞かれるが、なかなか思い浮かばない。熟語ではなく説明句になってしまう。


 悩んだ結果――「賢獣」か「和獣」はどうか、日本語にはないけれどつくってみたのだけど、とそれぞれ文字の意味を説明した。少し考えたあと、彼女は「和獣」を選んで色紙に書いた。

人間は結局動物であり、止まらずいつも動いていたい、(つまり、あまり考えすぎないで、ということでもあると思う)とはなるほどね、と思った。他にもいろいろ彼女とは話していたのだが、日本社会で生きる自分のあり方に疑問を投げかけられているようにすら感じた。

これからどんなことを言い出す外国人が来るのだろうか、楽しみになってきた。




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